クライアントは、そこそこ有名な大企業である。

「来週、クライアントさんとキックオフミーティングをやります。アジェンダは今回のプロジェクトのトゥー・ドゥーリストとロードマップの確認。ファシリテーションは僕がやるんで、ヤマダさんはドキュメントの方をお願いします」

「アジャ、アジェ……?」

 頭に浮かんだのは、「アジャコング」という名前だ。

「議題のことですよ。議題」

 キックオフの当日、Aさんの後にくっついてクライアント企業の会議室にのこのこ入っていくと、役員クラスがずらりとテーブルを取り囲んでいた。大センセイ、それを見ただけで、同じ側の手と足が一緒に前に出るロボット歩きになりそうであった。

 それにしても、Aさんはすごかった。まだ30代だというのに、役員を前にして、ホワイトボードにその会社が抱える課題をすらすらと書き出していくのだ。

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