相続人は妻や子どもだけに限定されていると思いがちだ。将来を見守りたい孫や、お世話になった人に遺言によって資産を渡すことはできるが、相続税が2割加算されてしまう。税金のことを考えると、やりにくいのが実情だ。

 そこで注目したいのが養子縁組の制度だ。佐藤税理士は節税対策になると説明する。

「一般的にはなかなか思いつくものではありませんが、養子縁組をすれば法定相続人を増やせます。基礎控除や生命保険の非課税枠も増えるのです」

 相続税は資産から基礎控除額を差し引いた額に課税される。基礎控除額は、3千万円+(600万円×法定相続人の数)の計算式でわかる。

 例えば相続人が妻と子の2人だったら、3千万円+(600万円×2人)=4200万円だ。資産総額が1億円とすると、それから4200万円を差し引いた5800万円が、相続税が課される対象となる。養子が1人増えれば、基礎控除額も600万円増え、課税の対象が5800万円から5200万円になるというわけだ。

 相続税は、課税対象となる資産額が大きいほど税率は高くなる。1千万円以下なら税率は10%。1千万円超3千万円以下なら15%、3千万円超5千万円以下なら20%、5千万円超1億円以下なら30%といった具合だ。

「養子縁組によってこの税率区分を下げられる場合は、大きな節税効果が期待できます。ただし誰を養子にするかでもめるなど、心情的な面でデメリットが生じるケースもあります」(佐藤税理士)

 法定相続人が増えれば、それだけもとの相続人が引き継げる資産が減ってしまう。

 養子縁組は何人でもできるが、相続税法では人数制限がある。多数を養子に迎え節税しようとした事例が過去に問題となり、税制が改正された。いまは実子がいる場合で1人、いない場合で2人に制限されている。実子がいて孫が複数いる場合、孫全員と養子縁組することはできるが、節税効果は1人分しか適用されない。

 体調が悪くなってから節税目的のためだけに養子縁組すると、税務署に認めてもらえないこともあり得る。メリットとデメリットをよく考え、準備した上でやる必要があるだろう。(本誌相続取材班)

週刊朝日 2018年6月29日号より抜粋

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