例えば1億円の土地があれば、路線価で評価すると時価の約80%に下がる。アパートやマンションを建てて人に貸していれば「貸家建付地」となり、さらに約20%減となる。不動産の評価額は、現金よりも3~4割減らすことが可能なのだ。

 相続対策のため、アパートやマンション経営を始める人は多い。相談を受ける佐藤和基税理士はメリットを指摘する。

「建物が立っている土地は更地に比べ固定資産税が低くなるので、相続後も有利です。親が賃貸物件を建てて生前贈与し、相続税を抑える方法もあります」

 現金を不動産に替えるといいことずくめのように思えるが、焦るのは禁物だ。不動産ならではの問題点もある。

 まず不動産は現金と違って分割しにくい。相続人が1人だけならいいが、複数いる場合は「共有状態」になってしまう。土地や不動産を細かく区切って配分するわけにもいかず、処分するにしても相続人全員の同意が必要になる。相続税は現金で納めるので、資産が不動産しかないと相続人が大変だ。資産状況を一度把握し、不動産と現金のバランスをどうすべきか、税理士らに聞いてみよう。

 健康悪化などをきっかけに、急に不動産を買おうとすると損をすることがある。不動産は定価がないので、適正価格を見極めるのが難しい。不動産の価格は全国的に二極化が進んでいる。都市部の商業地で過去最高値を更新したところがある一方で、値下がりが止まらないところも目立つ。高値づかみした後に急落しかねないのだ。

 アパートやマンション経営には空室などのリスクもある。佐藤税理士は警鐘を鳴らす。
「空室が埋まるかどうか、建物の維持管理にどれだけの費用が必要かなど、賃貸物件としての収益性をよく分析しましょう。せっかく相続税を抑えられても、資産を受け継いだ子どもが苦労することになれば元も子もありません」

 ほかの裏ワザにも共通するが、相続対策には慎重さが求められる。

(3)×保険は見直してスリムにする
→生命保険を使いこなせ 非課税枠は1人500万円

<ここがポイント>
●相続させたい人にピンポイントで現金を残せる
●亡くなってからすぐに現金が入る。高齢で入れる保険も
●早期解約では戻ってくるお金が払った保険料を下回る

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