「税務署が相続税の課税対象となる資産を調査する際に、亡くなった人とは口座の名義が違っても、実質的には同じだと判断されてしまうケースは結構多い。税務署は預金の動きをチェックします。贈与した相手が口座からお金を引き出すなど、実際に管理していたことがわかるようにしておきましょう」(曽根代表)
贈与したことをはっきりさせるために、契約書を残しておくと安心だ。
年110万円の贈与は、体調が悪くなってから慌てて始めても節税にはならない。亡くなる前3年以内については、相続財産に含まれるものとして課税対象とされる。早めにスタートしたほうが良さそうだ。
ほかにも“お得”な生前贈与の制度は複数ある。子や孫への教育資金として1人につき1500万円まで、結婚や子育ての資金として1千万円までの非課税枠がある。金融機関に専用口座をつくり、使い道を証明するため領収書などを出す必要がある。教育資金は受け取った人が30歳、結婚・子育て資金は50歳までに使い切らないと、残った額に贈与税がかかる。
税理士らプロたちは「生前贈与は最も手軽にできる相続対策」とアドバイスする。いろんな制度や細かな条件があるので、専門家に相談してみよう。
(2)×資産を残すなら現金が一番
→現金は不動産に替えよ 評価額は現金より3割減
<ここがポイント>
●不動産は分割しにくい資産。誰に何を残すのか検討
●焦って買うと高値づかみしてしまう。余裕をもって判断
●アパート・マンション経営は空室などのリスクがある
相続でもらってうれしいのは、やはり現金だろう。不動産や美術品、車などと違って価値がはっきりしている。維持費や処分費用もかからず、相続税の支払いにもまわせる。相続人の間で分割するのも簡単。親も資産を残すには現金が一番だと考えがちだ。
しかし、現金ばかり持っていると相続税の負担が大きくなる。資産を評価する際、現金は当たり前だが額面通りになる。預金が1億円あれば評価額は1億円だ。これに対し、不動産は、時価よりも安い路線価や固定資産税評価額で評価される。
「不動産には相続税が減る特例もいろいろとあるので、節税の余地も大きい。不動産の評価額は、時価の3割減から半分以下になるケースもあります。現金をそのまま残すより、不動産に替えたほうがお得です」(曽根代表)