歴史的な米朝首脳会談に便乗したい安倍首相(c)朝日新聞社
歴史的な米朝首脳会談に便乗したい安倍首相(c)朝日新聞社
米朝首脳会談の様子(c)朝日新聞社
米朝首脳会談の様子(c)朝日新聞社

 拉致問題は米朝共同声明に盛り込まれず、解決の道筋は見えないままだ。それでも政府は、日朝首脳会談の開催に向けて動きを加速している。

 9月に行われる自民党総裁選で3選への踏み台にしたいとの安倍晋三首相の意向が透ける。金正恩・朝鮮労働党委員長にひれ伏してでも実現へと動くだろう。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏が指摘する。

「安倍首相は3選のため国内政局にうまく利用しようとすると思いますが、会談に向けて日朝間の信頼関係が全く構築されていません。安倍首相には、戦後賠償や経済支援のお金を出しますということくらいしかカードがないのではないか」

 拉致問題解決を手柄にしたい安倍首相だが、実際は目論見通りにはいきそうもない。2014年5月、北朝鮮が拉致被害者の再調査を約束した「ストックホルム合意」は、その後まったく成果を上げていない。

 北朝鮮問題に詳しい東京新聞論説委員の五味洋治氏は、安倍首相は重大な選択を迫られるだろうと指摘する。

「日本政府は北朝鮮側の報告書を秘密裏に目にしたといいます。その内容は、拉致被害者全員の帰国を目指す日本にとって、とても公表できるものではなかった。突っぱねると、北朝鮮側は『これ以上どうすればいいんだ』と態度を硬化させたそうです。安倍首相は結局、この再調査の結果を認めざるを得ないのではないでしょうか。最近、官邸筋から『苦しく難しい選択を迫られる』という声が聞かれました」

次のページ