こう話すのは、内田さんだ。早稲田大学スポーツ科学学術院に在職中に、花王株式会社ヘルスケア食品研究所との共同研究を実施、睡眠不足と消費カロリーの関係を明らかにした。
実験では、“メタボリックチャンバー”という代謝が測定できる特殊な部屋を用い、被験者の健康な男性9人(平均年齢約23歳)について、7時間の睡眠をとった場合と、3.5時間しか睡眠をとらなかった場合とで、代謝の状態を計測。両者を比較した。
「予想は、3.5時間睡眠のほうがエネルギーの消費量が高いというものでしたが、実際は7時間でも、3.5時間でもエネルギーの消費量は変わりませんでした。睡眠時間が短いと脳や体はたまった疲労などを回復することができないため、昼間、できるだけエネルギーを消費しないようにする。その結果、太りやすい体質になるのではないでしょうか」(内田さん)
さらに、寝不足は過食の原因にもなる。睡眠不足が続くと、満腹感をもたらすホルモンのレプチンが分泌されなくなったり、食欲を増進させるグレリンの分泌が高まったりするのだ。それが結果的にドカ食いにつながってしまう。
「最近の研究では、レプチンやグレリンに加え、食欲をセーブする作用を持つPYY(ペプチドYY)というホルモンも減ることが明らかになりました」(同)
【5】目覚まし時計は「音」より「光」を選べ
朝、目覚まし時計に頼る人も多いだろう。これも「音」による刺激より、「光」を利用したほうが、目覚めがスッキリするようだ。科学ジャーナリストで『枕と寝具の科学』(日刊工業新聞社刊)などの著書がある久保田博南さんは、同書を書くにあたり、睡眠グッズを試した。「もっともスッキリ起きられたのは、光の目覚まし」と話す。
「試したのは読書灯のような目覚まし。時間をセットすると起床予定時間の30分ほど前から夜明けのように徐々に光が強くなっていく。音の目覚ましよりもずっと快適な目覚めになりました」(久保田さん)
※週刊朝日 2017年5月5-12日号より抜粋