石原さんは「昔から『トヨタ、松坂屋、……』と言われるように、愛知は地元を大切にする県民性。“名古屋企業”は業績堅調で、働き先としてもよい。大学から企業まですべて地元でそろう」と話す。
“大いなる田舎”とも呼ばれる名古屋。根強い地元志向は歴史的なものだろうか。
「織田信長や豊臣秀吉など、尾張からは傑出した人物がたまに現れる。ただ、信長は本能寺の変で討たれ、秀吉は本格政権をつくる前に死去。舞い上がるとろくなことがなく、三河の徳川家康のように目立たぬほうがよい。地元に残り、リスクをとらない姿勢は愛知の遺伝子なのかもしれません」
こう話すのは、県民性に詳しく『名古屋の品格』などの著書がある岩中祥史さん。名古屋市生まれで、愛知県立明和高校に通った。
高校時代、東大・京大をねらえる学力があっても地元大学に進む友人が数多くいたという。名古屋大経済学部を出て愛知県庁に入るなど、「県庁での出世をめざすのが、尾張・三河の伝統だった」と振り返る。
愛知の近年の特徴に、医学部志向の強さもある。
県内には、名古屋大、名古屋市立大、愛知医科大、藤田保健衛生大と医学部を持つ大学が四つもある。医学部受験に強い私立高校が多く、東海高校は国公立大医学科合格者数が全国1位。南山高校や滝高校もトップ30に入る。医者になれば、地元にも残りやすい。
※週刊朝日 2017年5月5-12日号より抜粋