もともとはせっけんの材料など工業製品に使われていたが、技術の向上で食用としても流通するように。安価でかつ使い勝手の良い点が買われて、00年代半ばからアメリカや日本で急激に消費量を増やした。
国内の消費量は菜種油に次ぐ2番目で、ファストフードや総菜の揚げ油、パン、スナック菓子類、カップ麺などに用いられている。
「このパーム油については、アブラそのものではなく、アブラに含まれる成分が原因で健康を害すると考えられています。ラットやマウスを使った研究で、さまざまな病気のリスクを高めることが指摘されています」
と奥山氏。具体的には、がん、脳卒中、糖尿病、ホルモンの異常などが挙がっているそうだ。ラットの大腸がんの発症率では、シソ油の群を対照にすると、パーム油のリスクはざっとみてその3倍にものぼる。
料理研究家の林葉子さんもこう話す。
「アメリカ農務省(USDA)は、パーム油はトランス脂肪酸の健康的な代替にならないとする研究報告を公表しています」
製品の改良などで健康への影響への危惧が払拭されない限り、パーム油は避けたほうがよさそうなものだが、なかなかそうもいかない事情がある。なぜなら「食品のパッケージを見てもパーム油が含まれているかどうかがわからない」(奥山氏)からだ。
「それは『植物油脂』などという名前で記されていることが多いからです。特に加工食品は、『食品表示法に基づく品質表示基準』で、原材料名に油脂の具体的な名前を明記する必要がない。原材料にどんなアブラが使われているかは、一目ではわかりにくいのです」(同)
最後に昨今、アマニ油やエゴマ油とともに人気を博しているココナツオイルは、飽和脂肪酸の一つで、奥山氏は「健康効果については、科学的根拠が出ているわけではない」と話す。
食生活とは切っても切れないアブラ。林さんは自身のセミナーを開催するとき、必ずこう言うのだそう。
「試しに1カ月、今使っているアブラをアマニ油やエゴマ油などのαリノレン酸と、バターやラードなど動物性脂肪に替えてみて。食品を買うときもパッケージを必ずチェックし、良質なアブラを厳選してほしい」
アブラの摂り方一つで健康寿命が延びる可能性も。あなたの未来が変わるかもしれない──。
※週刊朝日 2016年12月23日号