坂田さんには、小倉さんのような高齢者の常連客がいる。そのうちの一人、東美好さん(84)は春先に夫を亡くし、運転してくれる人がいなくて困っていた。

「とにかく便利だし、病院通いに使わせてもらっています。ぜいたくを言えば、スマートフォンでなく電話で呼べれば最高です」

 丹後町のウーバーを運行するNPO法人「気張る!ふるさと丹後町」の東和彦専務理事は、「以前から住民の足を何とかしたいと考えていた」と話す。

「路線バスの停留所から5キロも離れている家もある。これからますます高齢化率が上がることを考えたら、公共交通の空白地帯を埋めることが必要。2年前には私たちのNPOでデマンドバスの運行もスタートしましたが、足りない部分を補うためウーバーのシステムを導入しました。お年寄りがスマートフォンを使うハードルの高さなどがありますが、1年間は続けてみるつもりです」

 三重県菰野町でも、似たようなサービスの「あいあい自動車」を今年2月から町の運営でスタートした。会員制で、リクルートホールディングスが開発したタブレット端末から車を予約する。ライドシェアに使う車はリース。町内在住の22人の登録ドライバーが交代で運転する。利用料は15分500円とタクシーより割安だ。

 取材当日に予約していた岡康鈕(やすみ)さん(88)は、最近足腰が弱ったこともあり、家から3キロほど離れた病院通いに利用する。路線バスだと本数が少なく、時間帯によって帰りの便がなくなってしまう。とはいえタクシーは財布を圧迫するため、大助かりだと言う。

 こうしたライドシェアは一度使った人には好評だが、まだ普及しているとは言い難い。あいあい自動車の場合、サービスを始めた2月から7月までの半年間の運行回数は合計で170回。

 運賃収入からリクルートホールディングスへの支払いや車両のリース代を差し引くと赤字になる。町の補助金でやりくりしているが、担当者はこれから工夫が必要だと話す。

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