「いい医師に出会えれば、お任せでもうまくいく可能性があるわけですから」

 と上野医師は話す。

 問題患者の最たるものは、文句しか言わない患者だ。『一流患者と三流患者』には、著者の上野医師が受け持った、抗がん剤治療を受けている進行がん患者のエピソードが紹介されている。

「副作用がつらいので、3週に1回の治療を5週に1回に変えてほしい」

 患者は上野医師に訴えた。だが、3週を5週に延ばした際の治療効果を示す、科学的根拠がなかった。

「調子が悪いなら、薬はやめて様子をみましょう」

 上野医師が提案すると、患者は突然キレた。

「再発するからダメです!」

 5週に一度の治療を言い張るだけで、あとは何を言っても聞く耳を持たない。

「根拠がない治療は勧められない。理解してもらえなければ、それ以上の話はできません」(上野医師)

 このほかにも、診察室で怒鳴る患者、医師の前では従順な態度をとっていたのに、診察室を出たとたん看護師に当たる患者……。上野医師は多くの問題患者を目にしてきた。

「聞きたいことも聞かず、怒ってばかりいたら、医師もほかのメディカルスタッフも、最低限の付き合いしかできなくなってしまう」

 上野医師は嘆息する。

 こうしたいわゆる“三流患者”が被る不利益は大きい。南淵医師が言う。

心臓病では、治療の機会を逃すと心臓だけでなく、肝臓、腎臓も悪くなり、不整脈も出てくる。そうなると手術のリスクもグンと上がります」

『3分診療時代の長生きできる受診のコツ45』(世界文化社)の著者で、東京高輪病院内科の高橋宏和医師もこう述べる。

「医師らとのコミュニケーションが取れないと、必要な情報をもらえず、その間に病状が進んで、治療のタイミングを逸してしまう可能性も出てきます」

 医師から愛される一流患者ならばどうか。

「回り道せずに、最善、最良の医療に最短でたどり着けます。その結果、時間だけでなく、費用も節約できる可能性が高い。また、そういう患者さんであれば、別の病気が見つかった場合も、知り合いの医師を紹介したり、その病気に詳しい医師に問い合わせたり、検査を勧めたりすると思うんです。得する部分は多いと思います」(高橋医師)

週刊朝日 2016年6月17日号より抜粋

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