私大の43%が定員割れという厳しい状況を迎えるいま、少子化の荒波を真っ先にかぶっているのが小規模大学だ。全国779大学のうち、学生数が5千人を下回る小さい大学は約8割。だがその小ささを武器に変え、独自性を打ち出して学生を集める大学もある。
一昔前、大学といえば個人主義、放任主義が常識だった。しかし今は少子化を背景に、面倒見の良さが大学選びの基準になる時代だ。その点、小規模大学は教職員と学生の距離が近く、小回りも利きやすい。その最大限のメリットが、就職支援の手厚さに表れているというわけだ。
少人数教育へのニーズの高まりも、小さい大学にとっては追い風だ。大学通信ゼネラルマネージャーの安田賢治さんは言う。
「『高校で1クラス30人ぐらいで学んできた子が、何百人もいる大教室で勉強できるのか』と心配する保護者も多い。受験生も保護者も、教員と近い環境で学べる少人数教育を望む傾向があります」
少人数教育といえば、ゼミ教育の伝統がある一橋大や、ディスカッションやプレゼンテーション重視の国際基督教大(ICU)が“老舗”。いずれも学部学生数は5千人を下回る。また2004年に開校し、少数精鋭主義を標榜する国際教養大(秋田市)の学生数は899人。受験生から「東大に入るよりも難しい」と評されている。
日本の小規模大学は、世界的な評価も高い。英国の教育雑誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)は今年1月、学生数5千人未満の大学が対象の「世界小規模大学ランキング」をホームページで初めて公開、話題になった。そのトップ20に、東京医科歯科大、横浜市立大、東京海洋大という日本の3大学がランクインしている。
世界の大学を評価したランキングは複数あるが、THE版は注目度が高い。04年から発表されている「世界大学ランキング」は、教育、研究、論文の被引用数などの複数の指標に基づき、独自の採点方式で評価し、世界的にも影響力が大きいとされる。大阪大学特任助教の藤井翔太さんは解説する。