いざ親やパートナーの介護が必要になったときにあわてることがないよう、介護にかかる“お金”について知っておきたいもの。ケアタウン総合研究所代表の高室成幸氏に介護保険に関する疑問に答えてもらった。
Q.介護保険サービスにかかるお金が払えなくなったら?
A.1カ月に利用した介護サービス費の1割の自己負担分が一定の額を超えた場合に使える制度に「高額介護サービス費」がある。例えば、住民税を払っている世帯であれば、介護サービス費を月額3万7200円を超えて支払った場合、超えた分が払い戻される。この支給を受けるには、市区町村の介護保険担当窓口への申請が必要になる。
一方、医療費では、自己負担額が限度額を超えると、超えた部分の医療費の負担を軽減させる「高額療養費制度」があり、医療費が高い場合はこの制度が活用できる。さらに、一つの世帯で1年間(8月から翌年7月まで)の介護費と医療費の自己負担額の合計が一定の額を超えた場合、申請によって超過額が支給される「高額医療・高額介護合算療養費制度」も利用できる。
75歳以上の高齢の夫婦で、妻が中等度の認知症で介護サービス費用がかかり、介護する夫も持病があり、多額の医療費がかかっている場合を想定しよう。
例えば夫の医療費が月4万円、妻の介護費が月3万円とすると、年84万円かかる。だが、この制度を利用すると、56万円に抑えられる。ただし、自己負担額は、年齢や所得、加入している健康保険によって異なるので、市区町村の介護保険窓口へ問い合わせよう。
Q.保険会社の介護保険と公的な介護保険はどう違う?
A.公的な介護保険とは別に、民間の生命保険や損害保険会社も「介護保険」商品を販売している。これは、将来、寝たきりや認知症などで介護が必要になったときに保険金が支払われるもの。公的な介護保険ではまかなえない費用がカバーできるほか、公的介護保険と違い、加入者が自由に使える現金が給付される特徴がある。
掛け金が少なくて済む「掛け捨て」タイプ、要介護状態にならなかった場合でも死亡給付金や解約金が受け取れる「貯蓄型」、「一時金」や「年金」タイプなどがあり、現在の年齢、将来展望などを踏まえ、自分に合った保険を選びたい。
Q.介護保険料の支払いを滞納したらどうなる?
A.介護保険額を1年以上滞納すると、介護サービス利用料をいったん全額自己負担しなければならなくなる。1年6カ月以上滞納すると一時的に保険給付が差し止められ、さらに滞納が続く場合は、差し止められた額から保険料が差し引かれることもある。
2年以上滞納すると未納期間に応じて利用者負担が引き上げられたり、高額介護サービス費の支給が受けられなくなったりする。ただし、災害など特別の事情があると認められた場合は例外だ。
※週刊朝日 2013年12月6日号