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 今年8月に『その苦しみは続かない―盲目の先生 命の授業―』(朝日新聞出版)を出版した岡山県立岡山盲学校の元教頭、竹内昌彦さん(74歳)は、幼少期に失明し、壮絶ないじめを経験した。その後、最愛の長男との死別もあった。そんな竹内さんは、いじめに苦しむ子どもたちに「どんなことがあっても、死なずに生きてほしい」と説く。その理由とは? 竹内さんが本書で記したメッセージの一端を紹介する。

*  *  *

 いま学校現場の課題の一つは「いじめ対策」である。いじめは昔からあったが、いまのいじめは、昔よりも陰湿だという。

 弱い者を余計に陥れ、さらにいじめるという。それも1対1ではなくて、集団でいじめ、仲間外れにしてしまう。みんなと一緒になってその子をいじめないと、次は自分がいじめられる側になるかもしれないから、気が進まなくてもいじめに加わるようになる。

 いじめられて学校に行けなくなった子ども、いじめが原因で自殺した子どものニュースを聞くことがある。私はそんなとき、自分がいじめられていた頃のことを思い出し、さぞつらかったろう、悔しかったろう、悲しかったろうと慰めてやりたいと思う。

 しかし同時に、腹も立ってくる。

「なんで死ぬやつがあるか」と叫びたくなる。

 子どもたちの前で話す機会があるたびに、私は必ずこう訴えることにしている。

「みんな自分の命を自分ひとりのものと思うとるんじゃないか。それは間違いだぞ。みんなのお父さんとお母さんは、いますぐこの場所で、わが子の身代わりで死ねと言われたら、親はいつでも子どものためなら死ねる。親はそんな思いで、みんなを大きくしているのを知らんのか。

 みんなはその体の中に自分の命とお父さんの命とお母さんの命と、もっと言えばおじいさんとおばあさんの命まで抱えて、いま、大きくなりよんぞ。それなのに自分だけの考えで、勝手に首なんかつって死ぬやつがあるか。みんなが死んでしもうたら、みんなの親は、その後どうやって生きていったらええんなら。夢も希望も生きていく気力もなくしてしまうかもしれんぞ。どんなに悲しむか考えてみろ。

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