小学校での子どもの暴力行為が増加しています。10月31日に文部科学省が発表した調査によると、2023年度の小学校での暴力行為の発生件数は前年度比8554件増の7万9件。中学3万3617件(同3918件増)、高校5361件(同1089件増)と比べ、件数の多さと増加幅が際立っています。背景に何があるのか、いじめなど学校の問題に詳しい名古屋大大学院の内田良教授(教育社会学)に聞きました。

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小学校で7万件超の暴力行為。子どもは“凶暴化”しているのか

――1年間の件数が7万件。この数字について、どのように見ますか。

 文科省の調査資料では、暴力行為の「発生件数」と表現されていますが、教師が暴力だと発見し、認知できた件数、つまり「認知件数」だと考えられます。件数が「万」に達すると大小の感覚がわからなくなるので、もう少し実感に落としていくと、1000人あたりで11.5人、30人学級だと0.35人の計算です。子どもや教師への暴力、器物損壊などが3学級に年間1件。低学年では小さないざこざが日常的にあることを考えると、まだいくらでもあるはず。軽微な事案をカウントすれば、件数はもっと多くなると推測します。よってこの件数は、「教師が暴力行為について認識し、問題解決のために対応するようになった数字」と見るのが正しいでしょう。

――前年度からの増加幅については、どうでしょう。

 ここまで急激な伸びを、子どもの行動の変化で説明することは難しいですね。むしろ、これまで認知されていなかったものが、学校側の対応の変化で認知されて、件数が増加した側面が強いと思います。小学校では、23年度の発生件数は、10年前(2013年度)の1万896件から6.4倍にもなっています。これは、大きなトラブルだけでなく小さなトラブルも認知したものは報告するようになったということで、「暴力行為の件数が昔に比べ増えているから、いまの子は危ない」「暴力的な子が増えた」と考えるのは危険です。むしろ、数字が大きくなったことは、良いことだと思います。

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永野原梨香
永野原梨香

ながのはら・りか/『週刊エコノミスト』、『AERA』『週刊朝日』などに勤務し、現在、フリーライター。識者インタビューのほか、マネーや子育てをテーマに執筆中。

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