■「究極の焼け太り構想」を諦めない経産省
そんな連中に多額の資金を任せるのは、国民としては、自殺行為のようなもの。絶対にやってはいけないのだが、経産省は、JIC解散など全く考えていないはずだ。なぜなら、そこには「究極の焼け太り構想」があるからだ。
JICの前身の産業革新機構ができたのは2009年。存続期間は24年度までの15年間だった。ベンチャー投資が主目的だったが、実際は、ジャパンディスプレイとルネサスエレクトロニクスという2つの負け犬連合を経産省主導で救済するために大半の資金を投資。ベンチャー支援では失敗続きだった。このため、「ゾンビ企業延命装置」と揶揄され、このままでは24年度廃止は避けられなかった。
一方、経産省の官民ファンドでさらに深刻だったのがクールジャパン機構(CJ機構)だ。こちらはド派手な宣伝で名を馳せたが、大失敗続きでマスコミの袋叩き状態。廃止必至と思われた。
そこで経産省が一計を案じた。産業革新機構を名称変更とともにJICに改組。そのどさくさに紛れて、JICの終期を33年度までとして、事実上の延命を図った。しかも、同じ法改正の中に、JICに他の問題ファンドを吸収する受け皿機能を持たせるという内容を潜り込ませたのだ。経産省のCJ機構はもちろん、経産省以外の問題ファンド全てを全部のみ込むこともできる。2つのファンドの大失敗を逆手にとって、利権を拡大する「究極の焼け太り構想」である。
■「休止」「解体的出直し」は世耕大臣と官僚の騙しのテクニック
今回の騒動の責任を取った形を見せて、世耕大臣は、しおらしいところを見せた。さらに、19年度予算の要求を取り下げ、事実上の機構の「休止」宣言をした。経産省からマスコミには、「解体的出直しをする」というコメントも流れている。ファンドの専門家などでつくる「諮問委員会」でJICの運営や報酬を議論して、年内に田中社長の後任を決める方針だそうだ。