

産業革新投資機構(JIC)の高額報酬問題については、12月17日のコラム『安倍総理が崩壊させた官僚機構を再生できるリーダーとは?』でも書いたが、その後、田中正明社長ら民間人取締役9人全員が辞表を提出し、28日付で辞職することになった。アメリカに立ち上げたばかりの子ファンドも清算すると田中社長は発表している。経産省も19年度予算要求を取り下げており、これでJICは事実上の休止となることが確定した。
経産省は、JICに対して、1億円超の高額報酬を一度認めた後に、朝日新聞など報道で批判されると、突然、高すぎるとしてこれを反故にした。額の多寡については議論があるだろうし、手続き的には問題だが、経産省の言い分も公的機関の報酬の在り方としては一つの考え方だという見方もあった。
■ゾンビ企業延命に対する高額報酬が支払われていた!
しかし、その後の朝日新聞の報道によれば、JICの事実上の前身である産業革新機構(INCJ)では、既に9000万円超の報酬を認めていたことや、24年度末に予定される同機構解散時には最大7億円まで成功報酬を支払う規定があることが判明した。つまり、高額報酬は既に黙認されて実施されていたのだ。
しかも、INCJでこの高額報酬が支払われたのは、ジャパンディスプレイを救済した後の再上場で利益を出した13年度とルネサスエレクトロニクス株一部売却で益出しした17年度である。いずれも「ゾンビ企業救済」「民業圧迫」と批判された案件で、本来期待された、ベンチャー支援の成果によるものではない。
この経緯を見ると、経産省の対応は、何か立派な考え方に立って取られたのではなく、これまで認めていたのに、今回は、単に批判されたから、場当たり的に報酬を減額させただけだったと見るのが最も自然だろう。どんな言い訳をしても通用しそうにはない。
事実上INCJは企業再生ファンドと化していた訳だが、こうした企業再生を行う官民ファンドとしては、「産業再生機構」が2003年から2007年にかけて活躍したのがよく知られている。その成果によって、民間に再生手法が普及し、民間ファンドが成長した。したがって、もはや、企業再生での官民ファンドの出番はないというのが、市場関係者の一致した見方だ。そこにベンチャー支援を名目としたINCJが、政府保証付きのほぼ無利子のカネと信用を使って、乱入したのだから、ある意味成功するのは当たり前。その利益を理由に高額報酬を払っていたというのであれば、まさにスキャンダル以外の何ものでもない。