イスラエル人コスプレイヤー(イスラエルアニメ協会提供)
イスラエル人コスプレイヤー(イスラエルアニメ協会提供)
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Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長
Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長

 2018年12月の第一日曜日、120人の若いイスラエル人が集まり3時間の「日本語能力試験」に挑戦しました。日本語を母語としない人たちが、同時に世界中40カ国で読解、リスニングなどの科目に挑んだのです。

 ヘブライ大の女子学生ハナ・プロツキンさんも試験を受けました。彼女にとってこの試験の意味は、単に挑戦だけでなく、日本で働く未来へのステップなのです。どうして日本語を勉強しているのかを聞いたことがありますが、満面の笑みで「アニメです」。日本のアニメ業界で働くことを夢見ているのです。

 最近の若い世代は、日本の最先端文化にものすごく興味を持っています。若者は安倍首相の名前や経団連の存在について聞いたことがないかもしれません。でも、スマホで日本のアニメをチェック、漫画やファッションにも親しんでいます。そして、ほとんどの若者はすしが好きです。

 日本料理の存在感はとくに大きくなっています。わが国第二の都市テルアビブでは、200軒のすし屋があります。人口50万人の都市にですよ。都市全体のすし消費量はニューヨーク、東京につづいて三番目のマーケットです。イスラエルではすしはレストランでだけで食べるものではなく、イベントやパーティーでも気軽に食べます。人気のすしは日本にあまりおいていないサーモンとアボガドとスパイシー・ツナです。私はここ10年間で、すしが出ない結婚披露宴に出たことがありません。

 日本文化人気の事例として、コスプレ・イベントがあげられます。年に二回、アニメや漫画ファンのイベントが開かれます。そのひとつ、「ハルコン」と呼ばれるイベントは、数千人のコスプレ愛好家が集まり、中東随一の規模です。愛好家はコスチュームを披露し、趣味を同じくする人たちと会い、日本文化の情報交換をします。在イスラエル日本大使館はこれに目を付けました。昨年の「ハルコン」に富田大使(当時)がワンピースのコスプレで登場し、祝辞を述べました。

 大学においても日本の漫画、アニメのインパクトはもっとも強いと感じられています。世界中の日本研究をしている教授連は、1980年代の日本経営や経済力ではなく、漫画とアニメが学生を講義に引き付けると確信しています。オンラインでテレビアニメや心躍るようなストリートカルチャーに触れた世界の若者は日本を旅して、人生のいくばくかの時間を日本文化に捧げます。

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