少々遠慮なくいえば、アニメと漫画がなければ、世界の日本研究プログラムは半減すると思っています。

 ヘブライ大学における日本研究は大変少数だが熱心な学生たちによって1958(昭和33)年に始まりました。当時、約70人のイスラエル人の日本研究者は、日本で自分の研究を続けられる希望や日本に関連した仕事を見つけられることを目的にメインカルチャーである日本の歴史、文化、政治、言語を学ぶことを決めていました。日本語を選択科目としていた学生も当然ながら少なかったのです。

 学生たちの旺盛な日本への興味にこたえるために、大学図書館のなかに特別な部屋をつくり「日本のまんが図書館」として数年前にオープンしました。中東では最も大きいまんが図書館です。また、学生対象に日本への研修旅行も実行しています。夏季に全国を旅して日本人大学生と会い、日本の様々な側面を学んでいます。次回は東京で「オタク文化」にふれる予定です。

 ではアニメや漫画、そのほかのポップカルチャーが世界における日本の存在感を強めることに役立っているのでしょうか。私の答えは「イエス」です。神社の鳥居のように、今や漫画、アニメは世界の人たちに日本に興味を持ってもらう「入口」なのです。漫画やアニメは日本のイメージをポジティブにして、日本とその文化にもっと興味を持ってもらうようになります。これがなければイスラエルの若者は日本のことを知らないままだったでしょう。大学生に向き合っている教師として、アニメ、漫画の強い影響力は毎日感じています。

◯Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年エルサレム・ヘブライ大にて政治学および東アジア地域学を修了。2007年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に送られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。12年エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。

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