夏休みなどの長期休暇明けは子どもにとってストレスが高まり、自殺が増える時期であることは浸透しつつあるが、「最近はゴールデンウィーク明けも増えてきていて、特に休みが終わる最後の1週間は要注意」。石井さんが全国の学校で行っている中高生向けの講座では、メンタルヘルスの基礎知識のほかSOSの出し方なども伝えている。子どもたちからは、こんな声が寄せられるという。
<お父さんもお母さんも忙しそうで相談できない>
<悩みは自分だけで解決するものだと思っていた>
そこから見えてくるのは、悩みを持っていること自体がかっこ悪い、人を困らせると思い込み、周囲に打ち明けられない子どもたちの姿だ。誰にでも悩みがあり、誰かに聞いてもらったり、問題を取り除く努力をしたりしているということを、身近な大人がやって見せてほしいと石井さんは勧める。大人が悩みを打ち明ける姿を見ることによって、子ども達が疑似体験でき、打ち明けることのハードルが下がるのだという。
そして、いまや職場や家族、友人などにうつ病を抱える人が身近にいるのが当たり前の時代。子どもにとっても不調を抱えるクラスメイトや交際相手がいてもおかしくない。誰もが悩みの"支え手"として共倒れせずに正しい支援ができるよう、ソーシャル・サポート力講座ではこう語りかけている。
「優しい人や役に立ちたいと思う人ほど、悩みを自分ごととして考え、その人のために生きていることが多いのです。冷たく聞こえるかもしれませんが、『あなたの問題はあなたの問題。サポートはできるけど、解決するのは本人である、あなた』という考えが長期的に見ると早く状況が好転する支え手としてのあり方です。まずは、やらなくていいことをやっていないか?という視点で考えてみてください」
例えば、夜中にかかってくるLINE通話。相手が仲の良い友人や交際相手なら、心配で朝まで話に付き合ってしまうケースも多い。それでは、2人とも寝不足で授業に出られなくなって、支える人も壊れてしまいかねない。要求が徐々にエスカレートして、依存されてしまうこともある。電話に出るのは夜10時まで、朝起きたらLINEを確認するなどのルールを決めたり、週末に会って話そうねと約束したり、他の参加者の支え方の例から自分を犠牲にしない距離感の取り方などを講座では学んでいく。そして相手の自助力を促すために支え手として自分のやることやらないことの線引きを作っていくという。
思春期の子を持つ親でも活用できるテクニックは多い。