ストレス社会でメンタルの不調を抱える人が増える中、子どものうつ病も増えているという。症状や悩みを言葉にできない子どもたちの異変にどう気づき、どう支えるのか。
小学6年生のA子さんは明るく、友達とも仲良く付き合う社交的な女の子だった。しかし秋ごろ、ベッドから起き上がれなくなり、不登校になった。勉強どころか何もできなくなり、母親と訪れた心療内科で「小児うつ病」と診断された。A子さんは医師の問いかけに「つらい」「寂しい」と口にした。
A子さんが住んでいるのはマンションや一戸建てのある静かな住宅地で、同級生はほとんど中学受験をする。A子さんも3年生から受験勉強を始めたが、仲の良い友達は5年生のときに個人塾へ移ってしまった。A子さんは寂しいと思いながらも、働いている母親が「個人塾は授業料が高いから」と何かの折に言っていたのを聞き、自分はいまの塾で頑張るしかないと考えた。「6年生の夏期講習は頑張るように」と塾の先生や母親にも言われ、夏期講習は乗り越えたものの、学校が始まると授業と塾で勉強詰めの毎日。もう続かなかった。
子どものうつ病が増えているという。一昔前までは子どもはうつ病にならないという考え方が一般的だったが、ここ数年で「小児うつ病」の認知度が上がるにつれ、苦しさを言語化できない年齢の子どもたちが訴える頭痛や腹痛などの身体症状も治療につながるようになり、都内のある医師は「当院だけでも3年で3倍になっている」と話す。
『こどものうつ病 理解と快復のために』などの著書がある猪子メンタルクリニックの院長、猪子香代さん(臨床児童精神医学)は、発症率についてこう説明する。
「データによって変動はありますが、大人も含めて平均すると発症率は7%、子どもは3~8%と言われています。4歳~10歳(小学4、5年生)は3%ぐらいと低く、10歳以降から増え、18歳~20代は大人よりも高くなると考えられています」