■上手に付き合っていく

 そのためにも親には「息抜きをつくってほしい」と、郡司さんは呼びかける。

「散歩をしたり新しい料理に挑戦したり、子育て以外でのことで楽しむことが大切です。体を動かすだけで脳がリラックスして、子どもとぶつかることも減っていきます」

 冒頭で紹介した篠田さんは、救いになったのは同じ発達障害のある子どもを持ち普段からなんでも話すことのできるママ友たちとのLINEだったという。精神的に追い詰められ、子どもたちにつらく当たってしまった時、

<つらい、しんどくなってきた>

 とママ友たちにメッセージを送ると、

<うちもそう。しんどい><一人じゃないね、一緒にがんばろう>

 という返事が来て、それでずいぶん気持ちが楽になった。

「LINEでつながるだけでも救われ、外とつながる大切さを実感しました」(篠田さん)

 発達障害は、「治すものではなく、上手に付き合っていくもの」といわれる。郡司さんはこうアドバイスする。

「子どもは必ず成長します。3歩進んで2歩下がり、一瞬、後退しているように見えてもちゃんと成長しています。子どもがこうしないと困ると思ってしまうのは親の不安。親が育児を楽しいと思わないと、子どもはつらくなります。親の不安を子どもに投影させ、ちょっとした子どもの失敗で嘆いたり怒ったりするのではなく、日々の変化を一緒に楽しんでください」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年2月1日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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