たとえば、強い光や日光のまぶしさが苦手。冷蔵庫の機械音や時計の音が気になってしまう……。このように感受性がとても高く、小さな刺激も敏感に察知する気質を持つのが「HSC(Highly Sensitive Child)」の子どもたちです。発達障害や病気と勘違いされがちですが、そうではありません。その特徴を、医学博士・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子先生に聞きました。

MENU 「HSC」は、センサーの感度が抜群なのです 教室で、気の休まる間がない「繊細さん」 子どもが不快に感じる刺激を、親子で把握しよう

「HSC」は、センサーの感度が抜群なのです

――最近、よく耳にする「HSC」ですが、発達障害との違いを教えてください。

 「HSC」とは「Highly Sensitive Child」の頭文字をとったもので、直訳すると「とても感受性が強い子ども」という意味です。「Child」が「Person」になると、大人を指します(HSP)。この言葉は、2019年以降、メディアの特集や書籍などを通じて、広く知られるようになりました。

 「HSC」について現在わかっていることは、病気や発達障害ではなく、その人が生まれ持った「気質」であるということです。

――気質とは、性格のことでしょうか。

 性格は、環境や人の影響によって幼少期に形成される後天的なものです。これに対して、気質はその人が生まれながらに持っている先天的な特徴。性格は環境などにより変わることがありますが、気質は変えることが難しいとされています。

 HSCは感覚過敏の特性があるため、ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)などの発達障害ではないかと誤解されることがあります。発達障害は非常に簡単にいうと、脳の機能が不完全であるため、物事の処理に時間がかかる症状です。これに対してHSCは、感受性が高すぎるために受け取る情報や刺激が多すぎて、処理が追いつけずに疲れてしまう。脳機能ではなく、気質、個性によるものです。 

 HSCは、環境感受性、あるいは感覚処理感受性と呼ばれる心理的特性が高い子どものことです。同じ環境下にあっても、なにかの影響を強く受ける子どももいれば、ほとんど受けない子どももいてさまざまですよね。HSCの子どもは前者なのです。

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三宅智佳
三宅智佳

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