触覚過敏などでマスクが着けられないことを周囲に示すシール。スカイマークが全支店窓口や機内で搭乗客向けに配布している(写真:スカイマーク提供)
触覚過敏などでマスクが着けられないことを周囲に示すシール。スカイマークが全支店窓口や機内で搭乗客向けに配布している(写真:スカイマーク提供)
AERA 2021年1月11日号より
AERA 2021年1月11日号より
中学生起業家の加藤路瑛さん。マスクを着けられない子どもがSNSで批判されているのを知って、さまざまな商品開発に取り組んだ(写真:加藤さん提供)
中学生起業家の加藤路瑛さん。マスクを着けられない子どもがSNSで批判されているのを知って、さまざまな商品開発に取り組んだ(写真:加藤さん提供)

 外出時のマスク着用がなかば義務化されるなか、感覚過敏などによってマスクを着けることが難しい人たちもいる。無理に着けることは心身の負担が大きく、単なる自分勝手やわがままではないことを知ってほしいと訴える。AERA 2021年1月11日号の記事を紹介する。

【グラフ】発達障害を持つ人の半数以上がマスク着用に「我慢」「困難」と感じている

【前編/マスク着用できない「感覚過敏」の人もいる 「『マナーを守れない人』と排除しないで」】より続く

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国の発達障害情報・支援センターが発達障害を持つ352人に行ったアンケートによると、「我慢して着けている」「着用が難しい」と回答した人は56%に上った。

 厚生労働省はホームページで、発達障害があるためマスクを着けることが難しい人への配慮を呼び掛ける周知文を掲載。困難な状況は子どもだけでなく成人でも変わらないことや、フェイスシールドなどの代替方法も障害特性によっては着用が困難な場合があると説明し、広く理解を求めている。

 公共交通機関を利用する際のトラブルを防ぐため、民間企業もマスクが着用できない人の周知に乗り出した。スカイマークは昨年12月から支店窓口と機内でマスクやフェイスシールドを着用することができない搭乗客に「マスクがつけられません」と書かれたオリジナルシールを配布している。タイアップしたのは、感覚過敏を抱える千葉県在住の中学3年生、加藤路瑛(じえい)さん(14)が所長を務める「感覚過敏研究所」だ。

 加藤さんは幼少の頃からさまざまな感覚に敏感で、クラスメートの甲高い声やエアコンの音で頭が痛くなり、毎日のように保健室で休んでいた。レジャー施設に出掛けたり、旅先で名物料理を食べたいと思ったりしてもあきらめてきたという。

■着ける努力もしている

 加藤さんは自身が設立した会社の事業の柱として20年1月に同研究所を立ち上げ、感覚過敏の人たちが周囲の理解を得やすくなるグッズを開発。感覚過敏の特徴を伝える動物のキャラクターを考案し、「苦手なニオイがあります」「苦手な音があります」といったメッセージを添えた缶バッジなどの販売を手掛けた。コロナ禍の20年4月以降は、マスクが着けられないことを周囲に示す缶バッジや、肌に触れずに口元を覆うことで飛沫が飛ぶのを防ぐ「せんすマスク」を制作・販売している。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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