東京都庁で記者会見に臨む小池百合子知事(c)朝日新聞社
東京都庁で記者会見に臨む小池百合子知事(c)朝日新聞社
AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号より
AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号より

 感染者数が増加の一途をたどるいま、帰省に頭を悩ませている人も少なくない。帰省したいのに帰れない、控えたいのに帰らなければいけないなど事情はさまざまだが、躊躇する理由の一つに「周囲の目」もあるようだ。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号の記事を紹介する。

【帰省時に知っておきたい5つのことはコチラ】

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 この3週間がまさに正念場であり、勝負だ──。

 新型コロナウイルス対策を担当する西村康稔(やすとし)経済再生相は11月25日、感染拡大防止に向けて集中した対策を取ることを宣言した。しかし、それから3週間余りたっても、状況は改善どころか悪化の一途をたどる。1日の新規感染者数は12月17日に過去最多となる3211人を記録した。「勝負の3週間」前の11月25日に376人だった全国の重症者数も、12月16日には618人と1.6倍に増えている。

 政府の対応も迷走を極める。多くの医療関係者らが感染拡大の要因の一つだと指摘していたGoToトラベルは、菅義偉首相が11日のインターネット番組で「いつの間にかGoToが悪いことになってきたが、移動では感染はしないという提言も(分科会から)頂いている」と発言。しかし、その3日後には一転して年末からの一時停止を決めた。さらに、GoTo停止を決めたその夜には総理が高齢者8人での「忘年会」に出席し、批判を浴びている。

■例年よりは「帰省」減

 東京都内の病院で働く看護師の女性(29)はこうあきれ返る。

「私たちは友人とも会わず、外食にも行かず、職場と家の往復だけで頑張っている。それなのに政府はろくな対策もとらず責任を取る気もなく、発言と行動がまったく一致していない。真面目に働く気がなくなります」

 そんななか、一年のうちで人の移動が最も多くなる年末年始がやってくる。日本医師会の中川俊男会長は16日の会見で、「新型コロナウイルスに年末年始はない」と述べ、危機感をあらわにした。

 例年、インフルエンザは1月下旬にピークを迎えるが、年末年始の移動でウイルスが広まるからだと考えられている。感染症に詳しい内科医で、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師は、こう指摘する。

「新型コロナに関する海外の報告を見ても、ほかの感染症の例と照らし合わせても、人が移動すればウイルスも動き、感染が拡大することは明らかです。厳格な移動制限がない限り、年末年始を経て、新規感染者数は間違いなく増加します」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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