GoToの停止が決まり、年末年始に旅行を計画していた人からはキャンセルが相次いでいる。しかし、一般にホテルへの宿泊を伴わない帰省はGoToの対象ではなく、どれだけの人が移動するかは未知数だ。10日にJRが発表した東海道・山陽新幹線の年末年始の予約率は14%にとどまり、前年より66%減と大幅に少なくなっている。一方、ソニーネットワークコミュニケーションズが11月、スマートホームサービス「MANOMA」利用者を対象に行った調査では、「帰省する、離れた家族と会う予定がある/おそらくある」との回答が43.1%、検討中が19.9%に上った。調査対象者のなかには「帰省先が同じ県内」のような事例も含まれ、さらに感染拡大が止まらない状況を見て帰省を取りやめた人もいると考えられるが、それでも1カ月前の段階では6割の人が帰省を予定・検討していた。

 東京都の会社員女性(33)も、青森県の実家への帰省を予定している。5人きょうだいのうち、青森県内の医療機関で働く弟は帰省しない。都内に住む姉も近県の義実家から帰省を止められ、併せて帰省予定だった青森にも帰らないという。

■検査「陰性」なら帰省

 それでも、女性自身は帰ることを決めた。

「例年は30人近い親戚が集まっていましたが、今年は無理だと思う。地元の友達にも帰省していることは言わないつもりです。それでも、高齢の祖母に会いたいし、家族と過ごさない年末年始は考えられません」

 年末まで極力外出を控え、PCR検査を受けて陰性を確認してから帰省するつもりだ。1月11日ごろまで実家で過ごしてから東京に戻るという。

 一方、帰省を取りやめる人もいる。

 埼玉県に住む女性(31)は、宮城県の実家への帰省を中止した。夫、娘との帰省を提案したが、両親から強く拒まれたという。

「私たちにももし感染していたらという迷いはありましたが、むしろ関東から帰ってきていると近所に知れたら何を言われるかわからないということでした」

 女性には、1歳になったばかりの娘がいる。両親にとっては初孫。最後に会った3月はまだ首が据わったばかりで、歩けるようになった今の姿をぜひ見せたいと考えていた。女性は言う。

「両親も孫に本当に会いたがっていますし、今は元気な祖父母も高齢で、ひ孫にあと何度会わせられるかわからない。周囲の目が怖いなら近くにホテルを取るから、と提案しましたが、それでも何があるかわからないと拒まれた。どんなに感染対策に気を使っても、周りの人にはそれはわからない。そこまで言われたら帰ることはできません」

(編集部・川口穣)

AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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