「疲労や筋肉の張りは黄信号です。それ以上やったらけがをするという脳のサインですから、無理は禁物。そして痛みはイコール損傷ですから、痛みが消えるまでは休まなくてはならない。指導者が選手目線に立って選手の体を思いやれば、肩ひじなどの故障は自ずと減るはずです。逆に勝つためにいい投手のみを使う考え方では選手は守られません。いつか選手自身が後悔させられるでしょう」

 そう訴える古島医師は、球数制限について、こう考えている。

「ひじだけでなくあらゆる野球障害は、球数だけでなく強度やフォーム、疲労などさまざまな要因が複合して起こるものです。しかし、試合での球数制限ははっきり言って子どもたちの肩ひじを守るためです。ルール化することで指導者の考え方を改める機会にもなります」

 古島医師は、自らも高校時代は県立高でショートを守り、甲子園を目指していた。それだけに球児たちの気持ちは痛いほどわかる。

「私だって当然、中高生にメスを入れたくありません。でも、プロになりたいと目を輝かせる彼らを助けなければならない。本来は高校生ぐらいまではシーズンごとに異なるスポーツを楽しんで、甲子園大会でなく、骨や筋力などの体ができあがった大学生野球の方をもっと盛り上げるべきではと思います」

 さらに、こう続ける。

「今は小中学校の野球が全て甲子園を基準にしたトーナメントになっている。手術をしなければならない子どもをつくっているのは誰なんですか、ということです」

(編集部・大平誠)

AERA 2019年9月9日号