5月10日に「大学等における修学の支援に関する法律」が可決・成立した。これは10月に予定される消費増税を財源に、「住民税非課税世帯(年収270万円未満)及びそれに準ずる世帯の学生(両親と大学生、中学生のモデル世帯で年収380万円未満)」を対象に、授業料及び入学金減免と給付型奨学金を支給するという内容。対象となる大学・短大・高専・専門学校は一定の要件を満たす必要がある。20年4月施行予定だ。
「『奨学金』制度改善への政策提言」をまとめた奨学金問題対策全国会議事務局次長の西川治弁護士は、この法律を「複合的な面があり、全面的な肯定も否定もできない」と語る。
「公的な授業料等減免・給付型奨学金の仕組みを作った点は重要な改善で、対象となる人には大きいことですが、学生の経済的負担を軽減するだけでなく、大学改革を進めることも目的とするなど、問題点もあります」
支援対象となる学校の要件として、実務経験のある教員の配置、外部人材の理事への複数任命といったことが予定されており、大学の自治や学問の自由への不当な介入、天下りの温床となる恐れがある。
また、低所得者への支援が手厚くなった一方で、中間層の教育費負担は何ら軽減されないと西川弁護士は指摘する。
「国立大学が現在も実施している授業料免除制度の対象者は、新制度の対象者よりも広いし、私大の減免制度は私学助成で支援されている。新制度の実施にあわせてこれらが廃止・縮小されれば、対象にならない所得層はかえって負担増となる可能性もあり、新制度の対象になる層とそうでない層の間に分断を招きかねません」
学生アドボカシーグループ「高等教育無償化プロジェクト」(通称FREE)も、この法についてのステートメントで「中間層が対象にならないことにより、低所得者世帯の学生との分断、軋轢が生じかねないことも憂慮します」としている。
実際、無償化の議論がある中、東京工業大学、東京藝術大学が年額約10万円の学費値上げを実施、千葉大学も年額約10万円の学費値上げを発表した。国立大学の学費値上げラッシュが続いている。