ガテモタブン/緑も赤も唐辛子。一皿で10本以上の唐辛子が使われる料理もある。辛さはもちろん、しっかりウマイ。エマダツィ(唐辛子&チーズ)900円、干し肉のパクシャパ(豚肉&唐辛子)1100円、ごはん450円/東京都渋谷区上原1-22-5(撮影/写真部・大野洋介)
ガテモタブン/緑も赤も唐辛子。一皿で10本以上の唐辛子が使われる料理もある。辛さはもちろん、しっかりウマイ。エマダツィ(唐辛子&チーズ)900円、干し肉のパクシャパ(豚肉&唐辛子)1100円、ごはん450円/東京都渋谷区上原1-22-5(撮影/写真部・大野洋介)
「柿の種」から「マー活」まで“ニッポン激辛史”(AERA 2019年3月18日号より)
「柿の種」から「マー活」まで“ニッポン激辛史”(AERA 2019年3月18日号より)

 山椒・花椒多めの「シビレ系」料理が人気を集める「第4次激辛ブーム」が進行中だ。その先には、どんな新しい辛さがあるのかトレンドを予測した。

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現在の第4次ブームで、辛さのレベルは限界に達した感がある。次はどんな辛さがブームになるのか。ホットペッパーグルメ外食総研の有木真理上席研究員が注目するのはジャンルの広がりだ。

「山椒・花椒はさらに進化します。今は中華や和食などに限られますが、創作フレンチやイタリアンでも食材として注目されるかも。個人的に気になるのは柚子胡椒や生唐辛子など“生系”。使い方が広がりそうです」

 もうひとつ、アエラが注目したのが意外な料理。東京・代々木上原のレストラン「ガテモタブン」は連日満席。出されるのは南アジア・ブータンの伝統料理だ。ブータン料理は、唐辛子を野菜として食べるため「世界一辛い」と言われることもある。

 日本ブータン友好協会の渡辺千衣子事務局長によると、ブータン人にはご飯が好きな人が多く、少ないおかずで皿いっぱいのご飯を食べるために唐辛子の辛さが好まれるのでは、とのこと。とはいえ、同店は激辛を売りにする店ではない。オーナーの臼田香太さん(45)は言う。

「常連のお客様は、“辛い”よりも“おいしい”を求めて来てくれています。ブータン料理の味付けはシンプルな塩味でスパイスは使いません。唐辛子そのものの味を楽しめます」

 外食で求められるのは話題性やエンタメ性。ガテモタブンも11年のブータン国王来日時は問い合わせが激増した。ブータンに限らず、今後は「ちょっとマイナーな」エスニック料理がより注目されそうだ。

 激辛が日本の食文化に登場し、35年。「辛い」と一言で表現することもできるが、その味は実に奥深い。激辛文化は、今後どんな深化をたどるだろうか。(編集部・川口穣)

AERA 2019年3月18日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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