大人の事情で子どもが肩身の狭い思いをすることがあってはならない。「子どものために」がPTA活動の原点のはずだ(撮影/今村拓馬)
大人の事情で子どもが肩身の狭い思いをすることがあってはならない。「子どものために」がPTA活動の原点のはずだ(撮影/今村拓馬)

 熱心にPTA活動に取り組む人の中には、全員が参加すべきだといった考えを持つ人も少なくない。そのため、非会員が増えることと比例して、トラブルも増加しているようだ。

 最も多いのは「退会すれば、PTAで購入している物品を子どもに配れない」と言われるケースだ。証書ホルダーなどの卒業記念品や、卒業式で胸につけるコサージュなど、PTAから子どもたちに贈られる物品について、非会員家庭の子どもにだけ配布しないというのだ。

 理屈としては、PTA会費を支払っていないのに利益を得るのは不公平だということ。そのため「非会員家庭からは実費を徴収して子どもに同じものを配る」というPTAも多い。ただ、非会員からの実費払いの申し出を役員が拒んで子どもに物品を与えず、訴訟が起きた例もある。

 ほかにも、例を挙げればきりがない。都内の公立小学校に子どもを通わせるある母親は、「退会するなら、PTA主催のつき大会に子どもが来てはダメ」と言われた。中部地方の公立小学校に子どもが通う父親は、「運動会のテントはPTA予算で買ったものだから、やめるならお子さんを入れてあげない」と告げられた。千葉県のある保護者は、「災害用の備蓄品はPTA予算で買っているので、非会員家庭の子にはあげない」という役員の発言を聞いた。

 このような非会員家庭の子どもを排除したサービス提供は、本来は当然許されるものではない。なぜならPTAは、会員サービスを行う団体ではなく、学校に通う全ての子どものために活動する公共性の高い組織だからだ。PTAが校内に専用の部屋をもらったり、教室でプリントを配ってもらったりできるのも、公共性を認められた団体だからだろう。

 それなのに、「非会員の子ども排除」が起きるのは、PTAが長い間「保護者全員、参加必須」という認識で運用されてきたため、非会員になる権利があるとみなされてこなかったという歴史がある。

 戦後まもなく日本に導入されて以来、多くのPTAは、保護者全員が自動加入する形で運用されてきた。「PTA会員=全保護者」という間違った理解が定着し、「PTAは会員サービスを行う団体だ」という誤解が蔓延。誤った形で運用されてきた歪みが、子どもへのしわ寄せという形で表出している。

 これらの問題を解決する方法はないのだろうか。

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