子どもと相対するだけで大変なのに、遅刻したり休んだりすることへの申し訳なさや焦りが、ストレスを倍増させる。遅刻にならない。たったそれだけのことなのだが、目の前の子どもに、

「なんでぐずるの」

「なんで熱出すの」

 などという気持ちを抱かずに済むようになったという。

 遅れた分のリカバリーは、個人の裁量に任せている。

 4歳と6歳の2児を育てている伊東佳奈さん(41)がいう。

「業務全体を通じて結果が出ていればOKという社風ですが、翌日に早く来るとか、少し残って仕事をするとか、必ずどこかで相殺するようにしています」

 自身の仕事に誇りを持てるかどうかは、働く者にとって大きな意味を持つ。

「子どもを預けて働くからには、ママはこんな仕事をしてるんだよって誇れる仕事をしたいと思うんです」(里田さん)

 数字に表れる、会社の成果に直結するものだけが改革ではない。家族みんなが幸せになる。それも大事な「改革」なのだ。

【シックス・アパート】
2003年設立/社員35人/サイト構築・管理の技術開発など
全員がテレワーク仕事も介護もできる

「毎日会社に出社すること」すらやめてしまったのは、企業のウェブサイトを構築するためのプラットフォーム「Movable Type」を開発するシックス・アパートだ。

 従業員は40人だが、オフィスにはフリーアドレスの座席が10しかない。全社員が毎日テレワークで働いており、地方在住の社員も2人いる。

 テレワークを始めたきっかけは東日本大震災。政府が企業に15%の電力使用量削減を呼びかけたことだ。「週5日の出社を1日減らせば20%減になる」と考えてシステムを整えた。本格的に「全社員テレワーク」を導入したのは2016年8月。親会社からの独立に伴い、120坪のオフィスから30坪のオフィスに引っ越し。「会社のほうが働きやすい」という人は毎日出社しても構わないが、大半は月1~4回ほどの出社だという。

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