「保守的で素直な人が多かったけれども、自分の生まれ育った社会に根源的な違和感がない。悪いリベラル・左翼によって、すばらしい日本の国が汚されているという単純な図式に基づいて活動をしている。なぜ現状に対してそこまで肯定的になれるのか、悪いのは左翼だけなのか、どうにも理解できませんでした」

 今の右傾化は、「日本がなぜ他国に気を使わなければならないのか」という素朴ないらだちの次元にとどまり、問題の本質に迫る動きは少ないと感じている。安倍首相は外国に気を使ってばかりいるような日本を変えようとしていると見えるので、多くの人が飛びついているのでは、ある種の条件反射のような現象ではないかと分析する。

 その上でこう語る。

「今の右傾化は、結局新自由主義的な自己責任の論理一辺倒。これまでの左翼が強かった時代の反動に過ぎないのではないか」

 近代化へのアンチテーゼとして生まれ、現状に疑問を持ちながら活動してきた伝統的な右翼。その流れとは違う形で進むこの国の右傾化は、どこに行き着くのだろう。(編集部・山口亮子)

AERA 2017年5月1-8日合併号