東京・新大久保駅近くのアイカワ質店は、土地柄か、タイや韓国など外国人の利用客も多い。

「モノを担保にお金を貸すという仕組みはどの国にもあるようで、なじみやすいようです」(店主の相川丈さん)

 共通して多く持ち込まれる品は「金」だ。

「金の徳利セットや、ゴールデングラブ賞のトロフィーを扱ったこともあります」

 通常、店先ですぐに目利きをして融資額を決める。だが、金の大きなやかんが持ち込まれた際は、X線検査に出した。1kg以上のやかんは買い取りで約400万円以上にもなった。

●課題は若年層の開拓

 買い取りに特化した質屋もある。全国に中古品の買い取りチェーンを展開する大黒屋も元は質屋だ。

 東京都世田谷区の瀬戸質店は、買い取りをさらに進化させた。別会社として独立させた店舗で扱うのは、並行輸入品や自社オリジナルブランドの品々だ。自社ブランドのファンのほか、「もう手に入らない逸品」を求め、遠方から客がくることもある。

 全国の質屋に共通する課題は、若年層の開拓だ。残念ながら、若年層は、高価なモノをあまり持っていない。店主の瀬戸悠仁郎さんは言う。

「先日、財布を落としたという青年がやってきました。本来やらないのですが、とてもお困りの様子だったので、ポケットマネーから500円と、スマホを担保に数千円をお貸ししました」

 創業者の祖母は、「世のため人のため」と言っていた。若い頃、祖母に礼を言いたいとやってきた老人の姿も見た。だから、「自分は人情に弱い」という。

 昔話に悪役として登場するいっぽうで、品物の価値を適正に見極め、なじみの客が困った際には色をつけて融資する。かつて質屋は地域密着型の信用商売、人情商売の側面も強かった。

 カード払いが身近になり、生活品は100円ショップでもそろう。現代人の手もとに、利子を払い続けても置きたい愛着のあるモノはどれだけあるだろうか。(編集部・澤志保)

AERA 2017年4月3日号