東京都新宿区のアイカワ質店は、1948年創業。立地上、海外の利用客も多い。店主の相川丈さんは3代目にあたる(撮影/高井正彦)
東京都新宿区のアイカワ質店は、1948年創業。立地上、海外の利用客も多い。店主の相川丈さんは3代目にあたる(撮影/高井正彦)
瀬戸質店は買い取りと小売り部門を「La Sept(レセット)」として独立させた。並行輸入品やオリジナルブランドも取り扱う(撮影/高井正彦)
瀬戸質店は買い取りと小売り部門を「La Sept(レセット)」として独立させた。並行輸入品やオリジナルブランドも取り扱う(撮影/高井正彦)

 非正規社員、失業、高齢化、病気――。いま、奨学金や住宅ローンなどの借金返済に困る人が増えている。明るい未来を担保にして借金が出来る時代は終わりつつあるのか。AERA 2017年4月3日号では「借金苦からの脱出」を大特集している。

 昔から庶民の暮らしに根付いていた質屋。しかし、近年は、時代の流れに伴い、減少傾向にあるという。存続のためには、いったいどうすればいいのか。進化する質屋の、いまを探った。

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「女房を質に入れても初鰹」──。江戸時代の川柳にあるように、「質」は長らく庶民の暮らしに根付いた金融だった。さすがに人間が質になることはなかったというが、当座のカネに困ったら、手持ちの生活品を担保に借りていた。

 時は流れ、担保となる「質草」は、生活品から宝飾品などの贅沢品にかわった。切羽詰まった入り用は減少し、銀行が行う信用取引が主流になり、モノを担保にする機会も減った。

 全国質屋組合連合会のPR検討会会長、角野大弘さんは言う。

「昭和30年頃の2万1千軒をピークに徐々に減少し、現在は、警察庁の調べによると質屋数は約3千軒ほどです。

 大きな特徴は、消費者金融と違い、返済できなくても、モノで弁済できること。督促されることもなければ、信用に傷がつくこともない。質屋ならではのニーズはいつの時代もあります」

●世界共通の業態

 質屋が主に行う業務はふたつ、「預かり」と「買い取り」だ。預かりは質屋営業法に、買い取りは古物営業法に基づく。
 一般に預かりより買い取りのほうが高額だ。買い取りの約8~9割の金額で、利息が発生する預かりを選ぶのは、モノを手もとに残したい場合。期限内に利息を納めなければ、3カ月ほどでモノは市場に流れてしまう。これを「質流れ」という。だが、利息を納めれば、期限を延長することもできる。

 質屋営業法で定められた利息の上限は高い。鑑定、保管などに手間がかかるためだ。融資額が高額になるほど利率は下がるという。

「現代の質屋の形態はさまざまです。たとえばウチはインターネット経由の取引が多いですが、昔ながらの趣のある質屋もあれば、セレクトショップ風の質屋もあります」(角野さん)

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