ブラジルの武術「カポエイラ」の基本動作を学ぶ子どもたち。専門の日本人講師がたたく太鼓のリズムに合わせ、体を動かす。こちらも本格的だ (c)朝日新聞社
ブラジルの武術「カポエイラ」の基本動作を学ぶ子どもたち。専門の日本人講師がたたく太鼓のリズムに合わせ、体を動かす。こちらも本格的だ (c)朝日新聞社
竹内薫(たけうち・かおる)/サイエンス作家。科学評論、エッセイ、書評などを多数執筆。「サイエンスZERO」などテレビ出演も多い。無類の猫好き (c)朝日新聞社
竹内薫(たけうち・かおる)/サイエンス作家。科学評論、エッセイ、書評などを多数執筆。「サイエンスZERO」などテレビ出演も多い。無類の猫好き (c)朝日新聞社

「子どもには就学前から英語教育を」が教育熱心な親たちの合言葉だった時代は、今は昔。この数年でがぜん注目を集めているのが「プログラミング教育」だ。何をどう、学べばいいのか。

「机を前に動かしてスペースをつくり、後ろの壁のイスの前に集まりましょう」

 米国人でIT技術者でもあるマット・ジョン・ルッソ先生(37)が指示すると、6人の子どもたちの一人が言った。

「壁にあるのはイスじゃなくて机だけど」

 マット先生は、

「すいません。机でした」

 あちこちで上がる笑い声。実際のやりとりは、全て英語だ。

 とある平日午後の、「YESインターナショナルスクール」。横浜市西区のビル3階にある100平方メートルほどの教室で、幼稚園の年長から小学1年生にあたる5~7歳の子ども6人が、英語でプログラミングの授業を受けていた。

「みんなは机の前に座って。誰か1人だけ、前に出てきて立ってください」

 先生が言い終わるか終わらないかのうちに、子どもたちは「私! 私!」と手を挙げる。マット先生は、一人の男の子を指名し、こう指示した。

「スピン(回って)、スピン、スピン、スピン。ストップ」

●「正確な指示」を体感

 男の子が言われたとおりにぐるぐる回り、ストップすると、他の子どもたちに問題。

「彼は今、あなたたちから向かって、どちらを向いていますか」

 指された女の子が右と答える。

「正解。では、ここから左方向を向いてもらおう。指示してください」

 次に指名された別の女の子が、男の子に指示を出す。

「右方向に2歩ターン、または左方向に2歩ターン」

 その通りに動く男の子。

「はい。彼は今、左を向きました。正解です」

 指名されなかった子が「私が答えたかったのに」などと隣の子にヒソヒソ話すときも、自然に英語が出てくる。

 何のためにこんなことを?という疑問は、ひと通り「スピン」をやった後、子どもたちがそれぞれiPadを立ち上げ、細かいマスに区切られた正方形のフィールドの中で、キャラクターを動かそうとするのを見ているうちに解消された。左へ右へ、そして上へ下へ。先ほど、男の子に出したのと同様の指示を、タブレットに入力していく。

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