「自分たちは女と見られないのだと思い知らされました」

 ならばと、化粧もおしゃれもせず猛勉強し、成績はすべて「優」。在学中に、超難関の司法試験と国家公務員I種試験に合格し、財務官僚になった。

「完全な男社会でした。成功するには男として生きなければいけない。その環境に反発をおぼえて、今度は女性らしさを過剰に追求してしまった」

 お手本は、学生時代にサークルでもてはやされていた他大の女子大生。華やかなメイクのまねをし、可愛らしい話し方を身につけた。

「もともと顔が濃いのにつけまつげを二重にして、ニューハーフのようになってしまって」

 美を追求しても、受験勉強のように「正解」を求めてしまい、どこかしっくりこなかった。

 本を書くようになり、転機が訪れた。著書『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』『東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』を書くうちに、自らの生い立ちを振り返った。

「何者かにならなければと背伸びしていたことに気づいた。自分は普通なのに『強くならなければ、ちゃんとしなければ』と思いすぎていたんです」

 そう気づいてからは、メイクが薄くなり、話し方も地声に近くなった。「自分がどれだけ努力をしてきたか」を素直にさらけ出すことで、親近感を持たれることもわかった。

「もし東大卒女性に共通している『知性』があるとすれば、ありのままに甘んじないで生きているところ。現状に満足するより、理想像に向けて努力している女性が多いはず。そんな自分を、よく頑張ったねと受け入れられるようになりました」

AERA 2015年4月27日号より抜粋