大学の価値は入試の難易度(偏差値)という「入り口」のハードルの高さだけでは測れない。社会で活躍する人材を育てる役割が大学にあるとするならば、卒業生の就職という「出口」も重要。出口の実績で全国の大学を比較してみると、意外な結果が見えてくる。
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今回、編集部では、大学通信のデータをもとに、「就職偏差値ランキング」をまとめた。データは、回答のあった541大学を対象に、各大学で「有名企業」「国家公務員」「地方公務員」への就職率を算出し、偏差値に換算。それをランキングした。
有名企業は就職先として学生の人気が高く、身分や給料の安定した国家公務員、地方公務員になることは今や“勝ち組”とも言われる。このランキングからは、入試偏差値ではわからない、大学の出口の実力が見えてくる。
ランキング上位には、入試偏差値ではトップの東京大学や京都大学、首都圏の有名私大などではなく、地方の大学が名を連ねる。就職偏差値ランキングでは、東大は70位、京大は50位だ。大学通信の安田賢治常務は「教育系や理工系、商科系、国際系など得意分野を持つ大学の就職の強さがうかがえる。地方の大学の奮闘も見える」と指摘する。
トップ3を占めたのは、国立の教員養成の地方大学。上越教育大と兵庫教育大、鳴門教育大は、地方公務員への就職が8割を超え、多くが公立学校の教員になっている。就職では地元ならではの強みがあるのだ。
上越教育大の直原幹副学長は「大学院生の存在が大きい」という。同大学では学部生およそ680人に対し、院生は570人。院生の25%は教員経験者。学部生は授業やゼミで一緒になることが多く、教育現場の課題や解決法などを聞いて、就職活動に生かせる。また、就職支援室の7人のキャリアコーディネーターは公立学校の元校長や教育委員会経験者。進路相談から自己PR文の添削、模擬面接、模擬授業のアドバイスなども実践的だ。
「環境は東京の大学に負けない。東日本で一番の大学になれるように努めている」(直原副学長)
得意分野という強みといえば、大学で学んだ技術や知識が武器になる理工系や商科系の大学もランキング上位に来ている。
例えば、理工系では、東京理科大、名古屋工業大、電気通信大、芝浦工業大などが、東大や京大、阪大よりも就職偏差値が高い。また、難関国立大で最も高い就職偏差値となったのは、12位の東京工業大だ。伝統的に技術系の専門職に強い大学で、有名企業への就職率が57%と高かった。