冒頭の女性は、地元をはじめ、関東地方の解体工事会社を含めて計3社から相見積もりを取ったところ、一番高い会社と安いところとで、実に50万円近い開きがあった。結局、故人の遺品を整理する必要もあったことから、家屋の解体と合わせて任せられる業者に発注したという。遺品整理への対応も、業者によって異なるという。

 ここで心にとめておきたいのは、見積もりと実際にかかる費用とでは、往々にして異なる場合があることだ。首都圏で解体工事や遺品整理を手がける合同会社「REAL japan(リアルジャパン)」(千葉県柏市)の石山昌義さんはこう話す。

「見積書は真摯(しんし)に作成していますが、ある程度の相場はあっても、現場の状況は様々で一概にいくらとは言えません。ただ、家屋の設計図を見せていただくなど、建物の正確な情報を教えてもらえれば、精度は上がります。それと大事なのは事前の現場確認。現地が見られないと、どうしても概算的な目安以上のものをお示しするのは難しくなります。当社は原則、担当者がお客様と一緒に現場をみるようにしています」

 特に見積もりとの違いが生じやすいのは、家屋の下や敷地内に埋設物が見つかった場合だという。建物の基礎を取り除いた後に、その建物が建てられるよりも前に造られた建物の残骸が埋まっていたり、地盤を強化するために必要な杭などの構造物が設けられていたりすることがある。

「外部からは見えないものは、実際に工事に取りかかってみないと、どうしてもわからない面がある。不安な点があったら、ちょっとしたことでも遠慮せずに聞くべきです。直接聞きにくかったりおっくうだったりする場合は、別の業者や専門の団体に相談するのも手です」(石山さん)

 今年4月から規制が強化された、建物解体時のアスベスト飛散防止対策もコストがかさむ要因だ。昨年度から、解体業者など工事の受注企業に対し、建築部材にアスベストが含まれているかどうかの事前調査の実施が義務付けられた。今回の改正ではその調査結果の都道府県への報告が義務化された。結果の保存や作業状況の記録なども求められ、工程がそのぶん増える。当然、発注側の費用にはね返る。

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