週刊朝日 2022年10月14・21日合併号より
週刊朝日 2022年10月14・21日合併号より

「しっかり管理できるのなら、必ずしも解体する必要はありません。しかし、管理するのが難しいのに心理的、あるいは物理的に重荷に感じたまま持ち続けているケースも少なくありません」(伊藤さん)

 空き家となった自宅や実家を持ち続けるにせよ、解体に踏み切るにせよ、伊藤さんは「解体にいくらかかるか、まずは見積もりをもらっておくべきだ」と助言する。家を残すかどうかの大事な判断材料になるからだ。

 とはいえ、冒頭の女性のケースのように、家の解体は初めてという人も少なくないはずだ。誰に見積もりを頼めばいいか、イメージできないかもしれない。相続に関するコンサルティングを手がける「夢相続」(東京都中央区)代表の曽根恵子さんはこう話す。

「解体工事会社は全国にたくさんあり、選ぶのにかえって迷ってしまうでしょう。見積もりを取る場合は、複数の業者から『相見積もり』を取ることをお勧めします」

 解体費用は一般的な木造家屋の場合、1坪あたり4万円前後が相場とされる。しかし、あくまでケース・バイ・ケース。建物や外壁の構造、強度のほか、解体で使う重機を運び込んだり、運転したりするのに必要なスペースが確保できるか、庭に大きな樹木や庭石、敷石、物置などの構造物があるか、さらには、その地域の平均的な人件費や、解体で出た廃棄物の処分費用といった状況に左右される。

 例えば「旗竿(はたざお)地」と呼ばれるような、狭い通路にしか面していない家屋の解体は、最悪の場合、重機が使えず、一部の工程を手作業でやる必要が生じる。そのぶん人件費はかさみ、工期も延びる。増築や改築で屋根や内壁が強化されていたりすると、解体や廃材の処分に余計に手間がかかる。

「見積書に一定の書式があるわけではありません。会社によって価格の設定方法も違う。業者選びの際は質問しやすいか、丁寧に説明してくれたかどうかなど、会ったり話したりしたときの印象や相性も大事なポイントになります」(曽根さん)

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