※写真はイメージです (GettyImages)
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(週刊朝日2021年6月25日号より)
(週刊朝日2021年6月25日号より)
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(週刊朝日2021年6月25日号より)

「慢性的なだるさが続いて内科を受診したら、精神科に行くように言われて……」

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 千葉県在住の田中直美さん(仮名・72歳)。2年前、毎日のように会っていた友人・A子さんを亡くしたのを機に、うつうつとした日々を過ごすようになった。

 定年退職後、夫(71)と2人暮らし。仕事や子育てに追われる子ども2人とは、住まいも離れていて、会うのは半年に一度のペースだ。

 現役時代のころの夫は仕事も休日もアクティブに楽しむタイプだったが、退職後は一転、出無精となり、一日のほとんどをテレビの前で過ごすようになった。旅行に誘っても「俺は行かない」の一点張り。だから仲良しのA子さんと会ってたわいもない話をしたり出かけたりする時間が、最大の楽しみだった。

 A子さんが亡くなったのは、「これからいろんなところに旅行に行こう」と旅の計画を立て、盛り上がっていた矢先のことだった。

 A子さんが亡くなって3カ月ほど経ったころから、朝起きたときから気持ちが沈んでいる状態が続くようになり、それと連動するように次第に食欲が減り始めた。寝つきは良いほうだったのに、夜中に何度も目が覚めるようになったが、「70歳を過ぎると、誰もがそういうものだろう」と受け流していた。

 そのうち、外に出かけるのもおっくうになってきた。家でじっとしていると食欲もわかず、料理の意欲も落ちる。もともとおしゃれ好きで、月1回は美容院に通って身ぎれいにしていたが、出かけなくなると「きれいでいたい」という思いもしぼんできた。常に寝不足で慢性的なだるさを感じ、口角は下がり気味。鏡に映る自分は、どんどん年老いて見え、「もう私はダメだ」とため息ばかりが増えた。A子さんと楽しく旅の計画を立てていたころの自分が、とても遠く感じた。

 そんな直美さんを「年のせいかな」と見ていた夫や子どもも、次第に「体のどこかが悪いのでは」と心配し、病院で診てもらうように促した。直美さん自身も慢性的なだるさを改善したいと内科を受診したが、医師は「原因がわからない」。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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