さらに、精神の安定や平常心を保つのに必要とされ、人間の精神面に大きな影響を与える脳内の神経伝達物質「セロトニン」が加齢によって減少することも、高齢者のうつを加速させる要因と言われる。前出の和田さんは、こう続ける。

「幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは日光を浴びたり、体を動かしたりすることで分泌されますが、今はコロナ禍での自粛によって外に出ない高齢者が多い。家の中にこもることで、セロトニン不足が加速し、最近はかなり症状が悪くなってから病院を訪れるケースが目立ちます。うつ病は、早めの治療が大事。異変を感じたら、怖がらずに病院に来てほしい」

 その異変はどう見極めたらいいか。

 和田さんが言う。

「見極め方の大きなポイントが、睡眠と食欲。特に、寝つきが悪い入眠障害より、夜中に何回も目が覚めたり(熟眠障害)、早朝に目覚めたりして、その後寝られない早朝覚醒が、老年期うつに多く見られる特徴です。それに連動して、食が細くなっていないかどうかが大きな判断基準の一つになります」

(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2021年6月25日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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