数字を見れば決して良いと言えないが、筒香と同様に努力家で自己分析力が高く、確実に進歩している。

 メジャー挑戦1年目の19年は32試合で6勝11敗、防御率5.46。161回2/3で36本塁打を浴びた。日本では150キロ近い自慢の快速球が、米国では「打ちごろの速さ」になる。このままでは通用しないと痛感したのだろう。オフに投球フォームの改造に着手。テイクバックの際に左腕を体から離し、右手を高く上げる形にガラッと変えた。直球の平均球速は4キロ以上アップした152キロに。メジャーのパワーヒッターたちを力でねじ伏せる場面も度々見られたが、変化球が問題だった。ウィニングショットとなる決め球がないため、なかなか打ち取れない。地元紙の記者はこう分析する。

「菊池はスライダー、カーブ、カットボールなどを投げるが、すべて同じ軌道なので、打者の目が慣れると合わされてしまう。スプリットやフォークなど落ちる球があれば、投球の幅が広がりガラッと変わるのではないか。直球が良くなっているだけにもったいない」

 菊池は4年契約のため22年までメジャーでプレーできるが、過去2年間で思うような結果が出せていないため3年目の来季が勝負の年となる。現時点では先発ローテーションに入る可能性が高いが、打ち込まれる登板が続けば今までのような猶予は与えられない。責任感が強い菊池の性格を考えれば、事実上の戦力構想から外れた場合に22年もマリナーズでプレーしようとは考えないだろう。

 筒香、菊池が日本球界復帰となれば数球団による争奪戦になる。ただ、両選手は長年抱いていた夢をかなえてメジャーの舞台でプレーしている。共に同学年の29歳と経験値を重ね、野球選手として脂の乗り切った時期だ。日本球界を代表する「投打の両輪」が意地を見せてほしい。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事