コロナ禍で在宅勤務が拡大したことなどを背景に、新しい働き方として注目が高まっているのが副業だ。兼業やサイドビジネスなどとも呼ばれ、会社員が本職を持ちながら始めるケースと、主婦などが趣味で始めるケースがある。
50代以上のシニア層を対象にホームページ(HP)制作のレッスン教室を手がける富成世鶴香(せつこ)さん(55)は、後者のケースといえる。
27歳で結婚。2児の母となり、約20年間、主婦業に従事した。副業を始めたのは子どもの幼稚園時代。同じマンションに住む「ママ友」と共同で幼稚園グッズのネットショップを運営した。その後もブログのカスタマイズ(仕様変更)業務で月3万~4万円ほどを稼いだ。
47歳のとき、離婚。就職しても定年までわずかだったので、HP制作の支援業務を本格的に始めた。副業が本職になった形だ。独学にもかかわらず、昨年の平均収入は月約50万円までになった。
「離婚経験など、自分のプロフィルを公開したことが大きかったと思います。熟年離婚したお客さんから『私もそうでした』と声をかけられたことも。『私』という一人の人間を見てくれているように感じました」
会社員の副業希望者も増えている。日本では就業規則で禁止規定を設ける企業が多かったが、昨今はサイボウズやヤフーなど副業を認めるところが出てきた。シニア世代に特化した人材の派遣と紹介を手がける民間企業・シニアジョブでは、6月からは副業紹介支援サービスを開始した。
「自宅待機で給与を減らされた方、他部署の人が解雇されたケースを目の当たりにした方など、危機感を持って相談に来られる方が急増しています」
同社代表の中島康恵さんはそう話す。