巨人の原辰徳監督(C)朝日新聞社
巨人の原辰徳監督(C)朝日新聞社
日本一を決め、胴上げされるソフトバンクの工藤公康監督(C)朝日新聞社
日本一を決め、胴上げされるソフトバンクの工藤公康監督(C)朝日新聞社

 巨人・原辰徳監督が提唱した「セ・リーグ指名打者(DH)制導入」がファンの間でも大きな反響を呼んでいる。

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 巨人は今季、5年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、日本シリーズではソフトバンクに屈辱の4連敗を喫した。終戦から一夜明け、読売新聞東京本社へオーナー報告を行った原監督は、「(セ・リーグも)DH制は使うべきだろうね。DH制で相当、差をつけられている感じがあるね」

 と報道陣に語った。

 セ・リーグとパ・リーグの力の差は如実に出ている。

 過去10年間の日本シリーズでセ・リーグの球団が日本一になったのは2012年の巨人のみ。最近6年間でソフトバンクが5度の日本一と「球界の盟主」としての地位を固めている。

 05年から始まったセ・パ交流戦も、年度別でセ・リーグが勝ち越したのは09年の1年だけ。残りの14年はパ・リーグが勝ち越しと圧倒している。

 プロ野球ドラフト制度という平等な選手獲得方式を採用し、フリーエージェント(FA)で選手を獲得している球団もセ・リーグに偏っているわけではない。ではなぜ、セ・パでここまで差がつくのか。

 実は指名打者制を一因に挙げる声は現場でも多かった。セ・リーグの球団からパ・リーグの球団に移籍した投手は、

「パ・リーグは指名打者に強打者が入るから打線に切れ目がなく、一気にビッグイニングを作る。打線に投手が入らないので全然気が抜けない」

 と話していた。

 セ・リーグが1点を守る野球なら、パ・リーグは一気に大量得点を取る野球だ。指名打者が入った打線と対峙(たいじ)するパ・リーグの投手は、抑えるために能力が引き上げられる。セ・パ両球団でプレーした選手は、

「パ・リーグの投手の方が能力的に数段上。150キロ以上を投げる投手がゴロゴロいる」

 と強調していた。

 ただ、投手が打席に入るのが「本来の野球」という見方もいる。ネット上では、

「投手が打席に入るセ・リーグの方が、代打や投手交代など采配力の妙が問われる。野球の醍醐(だいご)味だと思うし、原監督はその能力がずば抜けている。個人的にはセ・リーグに指名打者を入れてほしくはない」

「投手が決勝打を放つなど、今までセ・リーグならではのドラマが数々あった。パ・リーグも指名打者が使えない試合は守備に難のある強打者を守らせないといけないし、一概に指名打者がないからパ・リーグに勝てないというわけではないと思う」

 という意見もある。

 セ・リーグもかつては桑田真澄(元巨人)、前田健太(元広島、現大リーグ・ドジャース)、川上憲伸(元中日)と各球団のエースたちが野手顔負けの打撃で球場を盛り上げていた。セ・リーグも指名打者制を導入するべきか。ファンを巻き込んで議論の余地はあるだろう。(牧忠則)

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