弥生時代は1食あたり約4千回噛んで食べていた? 現代の6.5倍もあったワケ (2/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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弥生時代は1食あたり約4千回噛んで食べていた? 現代の6.5倍もあったワケ

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山村健介週刊朝日#ヘルス
『「認知症が気になりだしたら、歯科にも行こう」は、なぜ?』(朝日新聞出版)から

『「認知症が気になりだしたら、歯科にも行こう」は、なぜ?』(朝日新聞出版)から

新潟大学歯学部の山村健介教授(本人提供)

新潟大学歯学部の山村健介教授(本人提供)

 つまり、咀嚼して「食べた」という認識が、自分の意思ではコントロールできない自律神経系やホルモンの活動を変化させ、エネルギー代謝を活性化させるのです。同様の効果は、自律神経やホルモンによってコントロールされる血糖値にも認められています。よく噛むことで血糖値が速やかに上昇して、満腹中枢の活動を活性化し、より満腹感を得られることもわかっています。「ダイエットしたいならよく噛んで」という理由もここにあるのです。

■多くの感覚を働かせながら咀嚼する

 感覚認知は、食事をした際の感覚入力を分析する脳の働きです。ここで人により大きく差が生まれるのは、食事の記憶、注意、情動など高次脳機能の情報なのです。食の記憶を鍛えるためには、常日頃から「食事の際にできるだけ多くの感覚を使うこと」がとても大切です。

 人間は視覚が発達した動物と言われています。食べ物の見た目を大切にし、目でも味わって食べる心掛けや、食べ物からもたらされる味や香り、歯応えなどに加えて、食材の背景や食事の思い出を頭に浮かべることも、感覚情報を増やすために有効な方法です。

 スーパーで切り身になった魚しか知らずに食するのと、生き生きとした新鮮な魚を知っていてそれを調理して食べるのとでは、大きな違いが生まれます。電子レンジで温めたご飯を食べるのと、自分で育てて収穫した米を炊いて食べる場合とでは、使われる感覚の量も変わるでしょう。

 そうした記憶を鍛える食事法は、自然に「よく噛んで」食べることにつながります。美しいものを、おいしく快い環境で食べること。単なる運動のための咀嚼を超えて、「味わい」「記憶にとどめる」ための咀嚼こそが重要なのです。

■良い食事をする努力は本人にしかできない

 素材自体をよく味わうためには、薄味にすることも咀嚼回数を自然に増やすために有効と言えます。私たち歯科医は、咀嚼のために必要な歯の機能の維持や回復のお手伝いはできます。しかし、「食育」に象徴されるように、健全な食の記憶や一回一回の食事を大切にして、良い食の記憶を積み重ねる努力は、皆さん一人一人にしかできません。

 それが、あなた自身に脳と咀嚼の良好な関係という結果をもたらすことになるのです。ぜひ今日から、よく噛んで味わう食事を意識して、実践していただきたいと思います。

◯やまむら・けんすけ
新潟大学卒業後、1994年に同大学大学院歯学研究科修了。同大学助手、助教授を経て、2009年から現職。現在は「介護予防促進のための『むせる』を予測するシステム開発」などに取り組む。

※『「認知症が気になりだしたら、歯科にも行こう」は、なぜ?』から


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