■ワインにはポジティブな評価とネガティブな評価がある

 ヘミングウェーはマッチョでハードボイルドな男性を主人公とした小説を好んで書いた。が、ぼくがヘミングウェーを読んで得た印象では、むしろその表面的にマッチョな主人公たちは実はとても傷つきやすくて繊細で、心に傷や闇を抱えて苦しんでいる人が多かったように思う(あくまで個人の感想です)。

 そのヘミングウェーも、晩年はうつ病に苦しんでついには自殺してしまう。

 アルコール消費がすぎると、うつ病を発症しやすくなるという説がある。これはアルコールの脳への直接の影響もあるし、アルコールの影響で職を失ったり、家族や友人との関係が悪くなったりする二次的な原因もある。また、うつ病に苦しむ人はアルコール消費が増えやすいという研究もある。

 両者は互いに因果関係の「因」であり「果」にもなるのだ
(Alcohol Use, Abuse, and Depression: Is There a Connection? [Internet]. [cited 2018 Dec 20]. Available from: https://www.webmd.com/depression/guide/alcohol-and-depresssion#2)。

 このように、ワインについては精神に対するポジティブな評価とネガティブな評価がある。いずれにしても文学性や文学的知性がワインによって醸造されたり、あるいは損ねられたりしたという研究をぼくは知らない。

◯岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著に『もやしもんと感染症屋の気になる菌辞典』など

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岩田健太郎

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現島根大学)卒業。神戸大学医学研究科感染治療学分野教授、神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長。沖縄、米国、中国などでの勤務を経て現職。専門は感染症など。微生物から派生して発酵、さらにはワインへ、というのはただの言い訳なワイン・ラバー。日本ソムリエ協会認定シニア・ワインエキスパート。共著にもやしもんと感染症屋の気になる菌辞典など

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