また、速歩の合間に2~3分間のゆっくり歩きをはさむことで、その時間に上半身を伸ばしたり、下半身のストレッチも意識しながら歩けるため事故も少ない。

 インターバル速歩による効果はほかにも、自律神経を整える、睡眠深度が上がる、うつ症状の改善や熱中症予防効果など。速歩をした後「30分以内にコップ1杯の牛乳を飲む」ことも能勢医師は勧めている。

「速歩のような『ややきつい』運動時は筋肉組織が少し損傷し、運動後30分以内はその修復のために筋肉が糖質とタンパク質を欲しがっている状況です。そのタイミングで牛乳の糖質と乳タンパクをとることで筋力が増強するとともに、血液量も増えます。また皮膚の血管が開きやすくなることで、汗もかきやすくなります。結果、暑さに強い体になり、熱中症にもなりにくくなるのです」(同)

 能勢医師が勧める速歩を行う時間は、15~17時ごろ。日中の活動を経て、ちょうど体がほどよく温まり、ほぐれているためだ。

 インターバル速歩の研究で、新たな効果効用もわかってきた。軽度認知障害(MCI)の人を含む中高年者の調査では実施5カ月で体力が6%向上し、認知機能指標が25%回復したのだ。軽度の膝関節痛も、5カ月間のインターバル速歩によって関節を支える支持組織が強化されるなどして、約半数の人の痛みが緩和したという報告もある。

 インターバル速歩で体力に自信がつき、見た目も若々しくなると、「意識」も変わってくる。

 インターバル速歩歴13年半という松本市在住の川上祐子さん(74)は、何年かぶりに会う人ごとに「社交ダンスしてますか?」「姿勢が良いですね」「歩き方が素敵」と口々に言われるのがちょっとした自慢だ。

 80代で「自分はもう余命いくばくもない」と意気消沈していた人も、インターバル速歩で自信を取り戻し、趣味の山登りを開始したり、日本アルプスにチャレンジしたくなったりしたという例もある。

 高齢者になっても、体力と元気があれば、まだまだ何でもチャレンジできる。人生100年が健康で充実したものになるかは、まさに「歩き方」次第なのかもしれない。(ライター・石川美香子)

※週刊朝日2018年10月12日号より抜粋