では現実はどうか。自宅での死亡者は全国で約17万人で、全体に占める割合は13%(16年人口動態統計)。全体の76%の約99万人が、病院・診療所で息を引き取った。

 この数値は、都道府県で大きな差がある。病院・診療所での死亡が多いのは、1位北海道、2位高知、3位福岡と続く。厚労省がまとめた「医療費、介護費の地域差分析等」によると、これらの地域は総じて病床数が多く、平均在院日数が長く、在宅死亡率が低い傾向だ。福岡は1人あたり医療費が全国で最も高い県、高知が2位、北海道が5位と続き、3道県ともに医療費の高さが際立っている。

 死亡率を過去にさかのぼると、51年は病院・診療所が12%、自宅が83%。現在とほぼ逆だった。医療施設の充実に伴い、病院・診療所での死亡率は70年代後半に自宅を上回った。

 厚労省は、医療費抑制や高齢者が自分らしい人生を全うできるようにするため、在宅医療や介護施設での看取り拡大をめざしている。鳥取、島根、大分など高齢者施設で亡くなる人が多い県もあるが、大半の日本人の死に場所は「自宅の畳の上」ではなく、「病院のベッドの上」だ。(藤嶋亨)

週刊朝日  2018年9月7日号より抜粋