記者会見する羽生結弦=日本外国特派員協会 (c)朝日新聞社
記者会見する羽生結弦=日本外国特派員協会 (c)朝日新聞社
元日本スケート連盟フィギュア強化部長で、千葉大学国際教養学部の吉岡伸彦教授(本人提供)
元日本スケート連盟フィギュア強化部長で、千葉大学国際教養学部の吉岡伸彦教授(本人提供)

 2022年の北京五輪で、男子フィギュアスケートで5回転を飛ぶ選手は現れるのだろうか。

【羽生の5回転について語る元日本スケート連盟フィギュア強化部長の吉岡伸彦氏】

 先の平昌五輪で男子フィギュアで2連覇した羽生結弦は帰国後、外国人特派員協会で記者会見(2月21日)した。

 その席で外国人記者から「将来的には5回転ということはありうるか」との気の早い質問が飛び出した。

 羽生は「小さい頃から自分のコーチに、お前は5回転もやれと言われていました。ちょっと挑戦したいなっていう気持もあります」と答えた。

 しかし、その30分後に行われた日本記者クラブでの会見で羽生はこうも話していた。

「5回転が主流になったりとか、4回転半が今のトリプルアクセル(3回転半)のように主流になるということは、まずこの50年においてはないだろうと、僕は予測します」

 その真意はどこにあるのか。

 ノービス(ジュニアの下のクラス)時代から羽生をよく知る、元日本スケート連盟フィギュア強化部長で、千葉大学国際教養学部の吉岡伸彦教授が羽生の「5回転」の可能性について本誌にこう解説してくれた。

「現実問題として、今、国際スケート連盟(ISU)は5回転の採点の基礎点を決めてないのですよ。ですから、仮に跳んだとしても点数にはならない。現実的には跳んでも意味がないということになります。4回転アクセル(4回転半)までは採点表にあります」

 2年に一度、国際スケート連盟の総会が、今年6月頃に開催される。そこでルール改正が提案されるという。

「国際スケート連盟自体は、現状のように4回転を何度跳んだかという数で順位が決まっちゃうというのをあまり好ましいと思っていない。やや4回転ジャンプの基礎点を抑える方向で進んでいくだろうという噂も聴こえてきています。ルールは出来ばえ(GEO)の点数を大きくする方向で進んでいます。そうすると、新しいジャンプを跳ぶという方向性はちょっと抑え気味になり、演技構成点(プログラムコンポーネンツ)を重視して音楽表現などを工夫する方向になるでしょう」(吉岡教授)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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