0・2秒で1回転しているのなら、5回転で1秒かかることになる。

「それをもうちょっと1割くらい速く回転するようにすれば、0・8秒ちょっと空中にいれば5回転がまわれる」

 5回転が跳べるかどうかはスケート靴には関係なく、身体能力とセンスにかかっているという。実際に、バスケットボール選手のダンクシュートでは1秒弱は空中に浮いているとされる。

「それだけのジャンプ力があって、0・8秒から0・9くらいの滞空時間が出せれば、5回転で降りられる。そのためには、助走速度を速くして、助走の運動エネルギーを高さと回転のエネルギーに変換していくというのをテイクオフ(離陸)でやらなければいけない」

 誰も跳んだこともない新しいジャンプは未知だ。

「回転数を増やすというのはとても怖いものなのです。ほんとにほどよいところで開かないと、回転したまんま氷に叩きつけられる危険もある」

 将来的には5回転を跳ぶ選手は出るだろうと予測する。羽生が実現する日は来るのだろうか。(本誌 上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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