誰にお金を借りるか? 鈴木おさむが薦める“借金シミュレーション”
連載「1970年生まれの団ジュニたちへ」
放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「お金の貸し借り」をテーマに送る。
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人にお金を貸すことについて考える。人にお金を貸すということは、それまで培ってきた信頼を一瞬で破壊するパワーがあります。
数年前、仕事仲間に結構なお金を貸しました。数カ月後に80%戻ってきましたが、あと20%は戻ってきていません。ただ、その彼は今でも僕と仕事をがっつりするパートナーで、僕が頼んだことやちょっと無理なことまで全力で向き合って仕事をしてくれます。
彼が金銭的にピンチになったときに、僕が向き合ったことに感謝してくれているからこそ、僕の仕事に120%の力を見せてくれる。お金の貸し借りを一度でもしたら、もう元には戻れないと思っていましたが、僕と彼のように、前向きな、違う変化を見せることもあるのだなと気づけた。
で。先日、いきなり知らない番号から携帯に連絡が来ました。出てみると、10年以上前に番号を交換した人、Mさん。Mさんの番号は自分の携帯からは削除されていました。30代の男性です。息が切れている。
Mさんは言いました。「おさむさんが前に書いた本に、借金を返済したことを書いていましたよね?」と。
20年以上前に、実家がいろんなトラブルに巻き込まれて、大きな負債を抱えることになったときに、僕も手伝って、借金を返したという話を書いていました。Mさんはその本を読み、深く感動したと。なぜか? Mさん自身が今、借金で火の車なんだと。そして家を追い出されてしまいそうなんだと。僕がお金を返していたのは90年代です。Mさんは僕が返済していたお金の状況を詳しく聞いてこようとします。「時代が違うので参考になりませんよ」と言うのだが、なかなか電話を切ってくれない。
